モテモテ

自分が嫌っていたはずの場所に、躍りこんで戦うさまを想像した。

結局異性だな、と思った。
マッチングサイトを見ているとよくわかる、顔や見た目で男を選んでいるのは女も同じだ。
かわいいが作れるように、誠実さや爽やかさも作れてしまう。
ボルダリングやフットサルやスノボーが好きで、アウトドアは一通りこなせて、子どもが好きで、冗談を言い合える人間だったらなんでもいいのだ。

そんな単純なゲームだったら、サクッと勝ってやればいいのだ。
てっぺんにいていい顔をしているやつらを、同じところに立ってバカにすればいいのだ。
そして、ここはそんなにいいところじゃないぞ、と大声で叫びたい。

その叫びが通用しないとしたら、結局それは男と女っていう一番めんどくさいものが絡んでるからだ。
俺だって絡め取られてるからよくわかる。
可愛い子と寝てみたいし、幻想だってバッチリ抱いてる。
電車の中で聞こえる、可愛い女の子たちのどうしようもなくつまらない薄っぺらな会話に反吐が出そうになっても、ここではないどこかに夢のように素敵なオヒメサマがいるという思いを、身体の奥底では捨てきれていないのだ。

押しつけられた幻想をぶち壊すために、一旦モテモテ王国の階梯をのし上がってみるのも悪くないかと思った。
でもきっとそれも虚しい。
どうしようもないのはわかっている。
できることなら神様にでも仏様にでもなって、今いる場所をよく見てみろ、そこがお前の生きる場所なんだと、踊る阿呆や見る阿呆の横面をひっぱたいて回りたい。
だけどまず、俺自身が、踊ることも見ることも避けてるくせに、ムッツリ阿呆なのだもの。
くだらないと笑い飛ばすには未練が強すぎるんだ。

いろんなことが間違っていて、見えない罠と鉄格子がどこまでも張り巡らされたこの社会の実相をさ、いつか心から笑い飛ばしたいんだ。