例えば、付き合っている女がいたとする。

その女が、その昔の男が争っているときに、無条件に「お前は悪くない」と女に言ってやること、そして昔の男の非を責め上げることは、必ずしも「正しい」ことではない。

 

要はどっちを守ってやりたいかという話ではないか。

 

「三月のライオン」で、零くんが三姉妹の父親の悪を暴くシーン。

あれだって、零くんが正しいわけではない。あれは勧善懲悪ではない。

あくまで零くんが、三姉妹の家、ないしはひなちゃんを守ろうとした決断の結果だ。

(……と言ってしまうのは言い過ぎか。あの父親はたしかに悪い男だ。)

 

でも、別に正しいことが、あるいは正しさを公平に量ったうえで決断を下すことが、誰かにとってうれしい結果になるというわけじゃない。

無条件に「お前は悪くない」と即断することが、誰かを喜ばせることもありうるのだ。