黒髪美少女の帝国

男が女に惚れるとき、男は女の「記号」に欲情しているのだ、というのを読んだのは、二村ヒトシの本でだったっけ。

黒髪の乙女、ということについて思いをいたして、ようやく思い切る覚悟がついた。
「純粋・無垢」の象徴になっている黒髪の乙女は、まさしく象徴、男の欲望を刺激する「記号」なんだと。
その記号による快楽をつかまえるには、同等の象徴的価値、端的に言って金が要る。
純粋さは夢だ、夢だからこそ人はそれを本気で崇めるし、手に入れようと思うと高くつく。

女も女で、自分の価値を高めるために、純粋の記号を負って見せようとする。
芸能界もAV女優も風俗のパネマジも出会い系のサクラも、みんな純粋を身にまとう。
本気で憧れ焦がれられる純粋さだからこそ、欲望を掻き立てることができる。

バカみたいに踊らされるんだ。
一番純粋な希望であり夢である部分だからこそ、みんなそれをまとってみせる。
たしかに人の見た目は人の内面を映し出す。
でも、ゆるふわ愛されガールや黒髪ぱっつん猫目ガールによっめ体現されているのは、無垢性・純粋性じゃない。
体現されているのは、男を躍らせてとっ捕まえようとする、たくましいほどの欲望だ。
アニメ漫画小説映画その他と現実とをはき違えちゃいけないんだ。
ようやくそのことを身をもって知ったと思う。