サークルの後輩の結婚&出産報告をFacebookで見た。
驚きすぎると人は笑うんだな。
道を歩きながら「たはっ」って言ってしまったよ。

それが2歳下の子たちだったからなのか。
まだ仕事もしていない、いわゆる学生という「未熟」な立場の子たちの話だからなのか。
理由はわからないけれど、とにかくまず最初に思ったことは「生命だな」ということだった。
誤解を招きかねない表現と自覚した上であえて用いるが、感じたのはグロテスクなほどの生命の生々しさだった。
グロテスクって、キモいとかえぐいとかそういうことじゃなくて、とにかく生々しいってことなんだ。ひたすらにそれを感じて、今もその感覚が消えなくってずっと離れない。

年上の人には幻想を抱いてるんだろう。
あの人たちは僕よりよっぽど大人なんだろうって。
実際のところは知らないよ。
俺が30歳になったって、たいして今とやってることなんて変わらないのかもしれないし。
だけど、30歳の自分には今より進歩していてほしいって願ってる自分がいるし、漠然と30歳っていう歳を買いかぶったり、逆にいろんなことを差し引いて考えているのだろう。

それとも、過去の自分を重ね合わせたから、いろいろ考えたのかな。
自分はもう少しイノセントだったというか。
無自覚に人のこと傷つけるようなことも言ってたし、でもとにかく好きな人が好きで仕方なかった。
あのときの自分みたいな人が、子供をさずかって、世界に向き合っていくその過程が、俺の頓挫した闘いの続きみたいに思えてしまって、胸をつかれるんだろうか。
人が一瞬にして強さを手にしてしまう、その瞬間を目にしたような気がしたから?

周りにいる人たちはみんな成熟しているように見える。
みんな自分なりに大人で、大人であることを拒んだ人たちも選択としてそれを選びとっているように見えて、その人たちが何かをやったとしても、それはなんとなく許せるような気がする。
納得できてしまうような気がする。
それは錯覚なんだろうか?
周りの誰かが誰かを殺したら、それはやっぱり不可解に思えて、グロテスクなほど他人めいて見えるんだろうか。

正直言って意味不明だ。
めでたいとか、分別がないとか、良いとか悪いとかそういうところとは別なところで、頭がぐるぐるする。
命が生まれて、また一つ何かが始まる。
それがこんなにも価値中立的なことだなんて思いもしなかった。

僕はよく腹を立てる。
SNSに上がっている他人の子供の写真とか、結婚生活の写真とか。
みんなに見てもらわないといけないくらい、それは不完全なものなのか?
いい、と肯定してもらわないと、いいと心から言えないものか?
思い出は自分らの中にしっかり持っておけ、と言いたいのではない。
幸せそうだとも思えない。
さもしいな、ととにかく思う。
どうしてほしいのかは自分でもよくわからない。

他人がどこまでいっても他人であることに絶望しているのかもしれない。
醜い、見たくもない、面白くもない。
なぜ?
自分のことは知ってほしい?
さあ、よくわからない。

アドリブで歌うみたいな快楽がほしいんだ。
あとには美しい足跡だけが残るような。
全力で駆け抜けてハイになりたい。
残ったものがあまりにも美しくて、自分で自分を抱きしめられるようなものがほしいんだ。
人のために作ったお話なんてほんとは嫌なんだ。
伝えたいことがあるわけじゃない。
言いたいことがあるのでもない。
とにかく天にも昇るような言葉と物語と風景と関係性を求めてる。
欲深いんだ。いつも妥協してるんだ。
描きたいものじゃなくって描けるものを描いてる感覚。
悔しくてたまらないんだ。

幸福ってのは観念的なもんじゃないんだって、現実に転がってるものはもっと生々しく動き運動していくもんなんだってことを味わわされたのかもしれない。
頭の中にある漠然とした美しいもの。
それは一体なんなんだ?
それに比べたら今目の前にあるものはなんて不完全なんだろう。
そしてなんて生々しくて粗雑で熱くて湿っているんだろう。
比べようがない、比べようがない。

誰か俺の心を切り開いて見せてくれ。
完全な言葉に置き換えてくれ。
愚にもつかない、物語にもならない心だ。
物語になる言葉はいつも、俺の心の少し外側にあるんだ。
俺の完全な内側にはないんだ。
いったいなんだっていうんだ。
やがて朽ちるものを書いてるにすぎないっていうのか。
いつまでも通用するものなんて書けっこないのか。
永遠を求める心が人間の一番深い罠だとしたら、いつまでもそれに負けていくために俺は生きているのか。
リアルは暖かい、生暖かい。

好きな人は、いつも他人だ。
描けるのは他人。
僕と少し違う、僕のすこしそとがわにいるひと。
僕の内側に住まうものはいつだって外には現れない。
欲望の向かう先を、むき出しの形で、僕は言葉にして晒したい。
それが美だと思っているから。
完全無欠の僕の欲望の対象。